届かぬ思い。

2005年5月6日 日常
今日、ニュースで見たのですが……。
尼崎の列車事故で亡くなられた男性の息子さんが、インタビューに答えられました。

その日、たまたま息子さんとお父さまがけんかなさったらしいのです。
そして、そのままお父さまは出掛けられました。
残された息子さんは、お父さまが帰られたら謝ろうと決心しました。
そんなとき、ニュースで列車事故を知ったのです。
息子さんは、祈る思いでお父さんを捜されました。
しかし、お父さんの姿を見つけだすことはできませんでした。
息子さんの携帯に、着信音が鳴り響きました。
見ると、お父さんからです。
電話に出ると、電話の相手は警察の方で、彼は息子さんに残酷な事実を告げました。

「この携帯の持ち主の方が亡くなりました」

その瞬間、息子さんの「おやじに『済まなかった』と言いたい」という思いは、永遠に行き場をなくしてしまったのです。
お父さんの死を知り、息子さんはどんなに悔やんだでしょう。
しかし、どんなに後悔しても、お父さんは帰ってきません。
ふたりがけんかをした朝に、時間を戻すことはできないのです。
帰ってきたお父さまに謝りたいという願いは、とうとう実現することはかないませんでした。

その後、息子さんは安らかに眠るお父さまに向けて「おやじ、済まなかった……」と謝られたそうです。
きっと、息子さんの思いは、天国のお父さまに伝わっていることでしょう。
いや、きっと口にしなくとも、お父さまは息子さんの思いを察知していたのではないでしょうか。
でも、息子さんの心には、一生癒えることのない傷が残るのではないかと、推察せずにはいられませんでした。

ひとつのミスが焦りと恐怖を呼び起こし、そして失点を挽回しようとした焦燥心が、100名を超す多くの方の命を奪い去りました。
また、多くの負傷者の方は、今も心と体に深い傷を負われています。
さらに、直接電車には乗っていなかった周囲の方々にまで、暗い影を落としているのです。

JR西日本の方たちを責めようとは思いません。
私だって完全ではない、それどころか欠点だらけの人間ですから。
ただ、この事故を教訓にして何を得るのか、また何が変わっていくのか……。
それだけは、見届けたいと思います。

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